「経済学ってなんやねん!」という人のためにかみ砕いて説明していきます。
株式でも為替(FX)でも不動産であっても投資をするのであればある程度経済学の知識はあった方がよいでしょう。
ここでは、経済学の基礎の基礎の部分についてポイントを抑えながら解説します。
もくじ(見出しのまとめ)
そもそも経済学ってなにさ?
「経済」が略語だというのはご存知でしょうか?
「経世済民」を略して「経済」です。
元は中国の四字熟語で「世を經(おさ)め、民を濟(すく)う」という意味です。
現代語にすると「世を統治し、民を救う」のが経済であり、それを学問的に体系化しているのが「経済学」です。
つまり、経済学を学ぶということは「世を統べる方法」「民を救う方法」を学ぶこととも捉えられますね。
ちなみに日本の大学では経済学部は文系学部に属していますが、まともに経済学を学ぼうとすると数学を結構ゴリゴリ使うので、海外だと文系扱いではなかったりします。
(そもそも海外では文系理系ではなく自然科学・社会科学・人文科学などで分けています。)
ミクロ経済学とマクロ経済学ってなにさ?
経済学を大きく2つに分けるとミクロ経済学とマクロ経済学に分けられます。
それぞれ分析する対象が違います。
ミクロ経済学
ミクロ経済学では、主に個人や各企業について分析します。
個人がどう行動するのが満足度(経済学では効用といいます)を最大化できるのか、各企業はどう行動するのが利潤最大化や費用最小化ができるのか、というような事を価格の面から分析するのが基本的なミクロ経済学です。
赤線部のように説明すると「ミクロ経済学勉強しなきゃ!」と思うかもしれませんが、とりあえずは置いておいて大丈夫です。
ミクロ経済学でいう企業の利潤最大化や費用最小化は投資には直接的には関係しません。
マクロ経済学
ミクロ経済学が各個人や各企業を個別に分析しているのに対し、マクロ経済学では国全体を分析します。
国全体でみて、消費や投資、政府支出や税金などの各要素がどのように変化したら国民所得があがるのか、といったことを分析していきます。
投資をするのであれば、まずマクロ経済学の基礎を頭に入れておくとよいでしょう。
で、ですね。
ミクロ経済学でもマクロ経済学でもたくさんの「学派」があります。
これがおそらく初心者を混乱させる最大の要因なので、この辺のことはできるだけ混乱を招かないように説明していきたいと思います。
たとえば、異性の好みでも人によってそれぞれじゃないですか。
痩せている人が好きとか、ポッチャリ系が好きとか。
経済学の考え方も学者によってそれぞれなんです。
ある学者は「こうした方が経済が発展する!」と考えていても、別の学者は「いやいやこうした方がいい!」と主張していたりします。
そのため、さまざまな学派が生まれていて議論しているんですね。
以前の戦争の根本である「資本主義VS共産主義」の構図もこういった考え方の違いですよね?
なので、経済学を勉強しようとするときは全てが連続している(繋がっている)とは考えないほうが良いかもしれません。
詳しく学んでいけば歴史的、思想的、哲学的に繋がっていたりはしますが、学派が異なれば基本的に考え方も異なっているという点に注意してください。
マクロ経済学の大きな2つの考え方
マクロ経済学の教科書に絶対載っている内容です。
出典引用元
これを見て「お~きれいにまとめてあるな~」と思える人は初心者ではないですね。
で、上の画像はとりあえず参考程度でよいと思います。
動画に任せることにしました
重要な点だけ説明していこうと思いましたが、まったくの初心者にどのように説明して良いのかわからなかったため、参考になる動画を貼ることにしました。
以下の動画は公務員試験?の講義のようです。
テキストはないですが、講師の方が読み上げているので問題ないでしょう。
基本的な内容ですが、その分初心者でもわかりやすいのではないかと思います。
1.5倍速程度であれば聞き取れるのでサクっと学習してしまいましょう。
1つの動画が終わると次の動画が自動再生されます。
ちなみに少なくとも国内の経済学部を出ている学生であれば以下の動画の内容は基本の基本として理解しているはずです。
ですので投資家として不利にならないためにも基本知識として抑えておいたほうがよいでしょう。
マクロ経済学
ミクロ経済学
こういったことを理解していれば、たとえばマイナス金利導入時など迅速にポジションを取れました。
ついでに信用創造についての動画もどうぞ
結構面白いですよ
抑えておきたいポイント
とりあえずマクロモデルは頭に入れておくと便利です。
Y=国民所得、C=消費
I=設備投資、G=政府支出
Ex=輸出、Em=輸入
これが頭に入っていれば、右辺の「個人消費があがった」「企業の設備投資が増えた」「政府支出を増やした」「輸出が増えた」などのニュースが国民所得にプラスに影響を与えることは一目瞭然です。
原則的な動き(右辺のどれかがプラスになったら経済にプラス)を理解していれば、右辺がプラスになったのに株価が下がっているというようなイレギュラーな動きにもすぐに気がつくことができます。
こういったイレギュラーな動きをしているときは初心者はとりあえずポジションを解消してその原因を考えたほうがよいでしょう。
また財政政策、金融政策がどういった影響を与えるのかについても確認しておきましょう。
財政政策と金融政策
金融政策とは、利子率の変化を利用して景気の調整をしようとするものです。公定歩合を下げる、預金準備率を下げる、債券を買う(買いオペレーション)を行うと利子率が下がりますね。すると、企業はお金を借りやすくなります。借りたお金で投資・生産を拡大します。そうするとGDP(まあ所得ですね。)が増大し、景気は回復に向かう。このようなことを狙って行うのが金融政策です。
マイナス金利政策もまさにこれですね。
「公定歩合」については現在はこのような呼び方はしていません。
正式には「基準割引率および基準貸付利率」といいますが、単に「政策金利」と言ってしまうこともあります。
このように同一のことを様々な呼び方をしている点も経済学をわかりづらくさせている要因の1つですね。
要するに中央銀行(日本では日銀)が市中銀行(UFJ、みずほなど)にお金を貸す時の金利のことです。
この金利が高いと、市中銀行は民間にお金を貸し出すよりも日銀に預けたほうが有利になるので、結果として世の中に出回るお金の量が減ります。
一方でマイナス金利にすると、市中銀行は日銀にお金を預けると損をするので、民間に貸し出すようになり、世の中に出回るお金の量が増えます。
(そりゃ、有能な人材育たないわな…)
「預金準備率」というのは市中銀行が実際に確保しておく現金の割合のことです。
たとえばUFJ銀行に総額1000億円の預金が預けられているとして、預金準備率1%だとしたら10億円の現金は銀行に準備しておく必要があります。
この場合に預金者が10億円以上の預金を一気に引き出そうとすると資金不足になってしまいます(取り付け騒ぎ)
ちなみに預金準備率は日銀が公表しています。
預金準備率が高ければ高いほど、その分市中銀行はお金を銀行に留めて置かなければならないので、世の中に出回る(運用される)お金の量が減り物価が下がります。
財政政策は公共事業などを行い、GDP(所得)を増やしそれによって更なる需要(消費)を増やし景気を回復させようとするものです。
で、違いですが、財政政策でGDPが増えるとどうなるか。GDPが大きいというのは、物がたくさん作られて、たくさん売れるということでしょう。そのような状況では、すぐにでもお金が必要になります(そう、利子を払ってでも)。言い換えれば貨幣需要が増大する。すると、利子率が上がる。その結果、投資・生産は縮小に向かう。GDPは縮小し景気は後退に向かう!(当初の目標と逆効果)
と、こういう具合に財政政策は、結果として金利の部分にまで触ってしまい逆効果になることがあります。
この説明の前半はケインズ経済学で後半がそれを否定している経済学の考え方ですね。
まぁ、財政政策と言ったら公共事業の事を指している場合がほとんどです。
政府が税金で仕事を依頼することで、経済を回そうとしています。
たとえば、アベノミクスの3本の矢は「財政政策」「金融政策」「成長戦略」であり、経済学でのオーソドックスな経済政策を実行しています。
財政政策や金融政策については、IS-LM分析の図解を見るとわかりやすいでしょう。
(本当は計算問題を解くと理解が深まるのでそういったテキストを解くことをオススメします)
ただ、ここまで説明してきた内容はかなりオーソドックスというか古いというか、前提知識的なお話です。
そこで、もう少し進んでいきましょう。
効率的市場仮説と合理的期待形成仮説くらいを抑えておけば投資初心者はとりあえずOKだと思います。
効率的市場仮説
野村證券から引用します。
現時点での株式市場には利用可能なすべての新たな情報が直ちに織り込まれており、超過リターン(投資家が取るリスクに見合うリターンを超すリターン)を得ることはできず、株価の予測は不可能であるという学説である。将来の株価の値動きは過去の株価の値動きとは関係なくランダム(不規則)に変動するという、ランダム・ウォークを説明する考え方になるが、科学的に証明はされてはおらず、確からしいという仮説の域を出ていない。
効率的市場仮説によると、特定の手法によって儲かるような機会が放置されることはなく、価格変動の予測が困難である以上、たとえ専門的な知識や技術をもつファンドマネージャーが銘柄を独自選別するアクティブ運用型のファンドであっても、市場平均に勝つのは難しいということになる。効率的市場仮説の下、株価指数連動型インデックスファンドとETF(上場投資信託)が誕生し、目覚ましく普及してきた。
これに対し、効率的市場仮説では実体経済からみて株価が割高になるバブルの発生やその崩壊が説明できないとする批判が、特に行動ファイナンスの観点から根強くある。行動ファイナンス理論では、投資家は必ずしも合理的ではなく感情や心理状況に左右されるため、バブルの発生のように誤ったコンセンサスの均衡状態が続くことで企業業績などファンダメンタルズからの大幅乖離(かいり)も一定期間続く可能性があるとする。効率的市場仮説に反する事象をアノマリーと呼び、低ボラティリティ運用の中長期のリターンがより価格変動リスクの高い市場平均を上回ったとする実証研究結果もある。
2013年のノーベル経済学賞は「株式や債券市場の短期的な動きを予測するのは無理だが、中長期的には予測可能性の余地がある」という見方のもと、効率的市場仮説を1960年代から中心的に提唱してきたユージン・ファーマ(Eugene Fama)氏と、効率的市場仮説に批判的立場の行動ファイナンス派ロバート・シラー(Robert Shiller)氏の米学者双方に与えられ、反響を呼んだ。
「株価は全て折り込み済み」なんて言いますが、これは効率的市場仮説に基づいた主張です。
「効率的」というのは「無駄がない」ということです。
「株価に無駄がない」=「その時点での株価は既に適正なのでそれ以上動かない」
実際、効率的市場仮説が有効に働いているのであれば、短期的な売買ではまず利益を上げることは不可能です。
しかし、デイトレーダーの存在等を考えると逆説的に効率的市場仮説が完全には有効ではないということでしょう。
合理的期待形成仮説
合理的期待形成仮説とは、現時点で入手できるすべての情報を利用して、最も合理的に将来を予測するという仮説です。過去のデータだけではなく、将来の金融政策や財政政策など、あらゆる情報を利用して合理的に各人の期待を形成するであろうということです。
「期待」という言葉は「将来予測」という意味です。
経済学ではこの仮説が出てくるまで、過去の情報を元に将来を予測するという考え方が基本でした。
一方でこの仮説では、「今後、政府がこういう政策しそうだから株を買っておこう」というような将来の起こりうる事象をも判断材料とした上で行動するという仮説です。
実際にはこの「期待」の合理性に個人差があることや、そもそもの「期待」と「現実」の差により、市場の効率性が失われているのでしょう。
つまり、より正確な「合理的期待」を持つ個人(勝ち組投資家)と、不正確な「非合理的期待」を持つ個人(負け組投資家)とが存在し、その合理性の違いにより株価の変動が起こっていると言えます。
またどれだけ正確な「合理的期待」を持つ個人であっても、それはあくまで「期待」(将来予測)であり、はずれることもあるということです。
個人の投資家としてできることは、「より合理的な期待」を形成することです。
ゲーム理論と不完全情報
特に低位株やIPO株、新興株をいじる人はゲーム理論や不完全情報のあたりもサラっと学んでおくとよいかもしれません。
これらはミクロ経済学の範疇です。
ガッツリ勉強したい人は、書籍で計算問題をガツガツやってみてください。
ゲーム理論
金融論やポートフォリオ理論についても書こうと思いましたが、疲れたのでまたの機会にしようと思います。