これから不動産投資をやろうか迷っている方のために、不動産投資を始める前に知っておきたい基本知識を網羅しました。
既に不動産投資をしている方は知識の確認に使ってください。
また、「不動産投資として物件を選ぶこと」と「自分が住む家として物件を選ぶこと」は大きく異なります。
もくじ(見出しのまとめ)
セールストークに気をつけよう
基本知識に行く前に、このページを見るに至った経緯が「セールスマンに不動産投資を勧められたから」なのであれば要注意です。
あなたに勧めた物件が儲かるなら自分で投資しているはずです。
まずは冷静になって基礎知識を確認してから考えましょう。
投資をするにあたって「勉強をしない=カモになる」ことを意味します。
もしあなたに基礎知識が欠けているのであれば、あなたはカモになりかけています。
投資をするのであれば、勉強を怠ってはいけません。
日本では投資に関する勉強は学校では教えてくれていません。
そのため、高学歴で知識に自信を持っている人ほどカモになりやすいのも実情です。
特に不動産投資は単価が高い投資です。
まずは不動産に投資する前に、自分の知識獲得のために投資を行ってください。
不動産投資の超基礎知識
不動産投資をする上で最低限知っていなくてはならない内容を説明します。
これらは不動産投資をする上で知っていて当然の内容です。
知識の確認に使ってください。
表面利回りという罠
表面利回りという言葉はご存知かと思います。
式を見れば分かる通り、年間の収益額が投下資本(物件価格)の何%にあたるのかがわかります。
または、何年間で投下資本が回収できるかの目安でもあります。
表面利回りが20%であれば、だいたい5年で回収。
表面利回りが1%であれば、だいたい100年で回収です。
この表面利回りは便利な指標ではありますが、実際の利回りとは大きくことなります。
なぜなら多くのリスクを考慮していない理想的な状況下での利回りだからです。
空室リスク
事件・事故物件リスク
災害リスク
収入額下落リスク
など
後述しますが、家賃収入は築年数に応じて下落してきます。
当初の収入額で貸し出せるのはほんの2.3年でしょう。
また、入居者が途絶えないことなどありえません。
入居者がいない状態が多ければ多いほど収入額は減ってしまいます。
RC構造の建物であれば法定耐用年数は約50年です。
不動産に限らず、投下資本の回収に10年以上掛かる(表面利回りが10%以下)のであれば投資案として優秀ではありません。
結論から述べますが、不動産投資をするのであれば表面利回りが15%以上の物件に絞り込んだほうがよいでしょう。
キャピタルゲインとインカムゲイン
株式投資等をしている人にはお馴染みの言葉でしょう。
インカムゲイン:家賃収入
不動産投資の場合は積極的にこの両方を狙えます。
キャピタルゲインを得るためには「安く買い、高く売る」それだけです。
バブル時代はこのキャピタルゲインを目的としたババ抜き合戦が行われていました。
このキャピタルゲインを狙うのは難しいですが、キャピタルゲインを積極的に狙う意識を持ってください。
多くの不動産業者はインカムゲイン(家賃収入)を強調しながら利回りの説明をします。
キャピタルゲインにはほとんど触れません。
しかし、不動産投資で大きく稼ぐためにはキャピタルゲインを狙うのが最も効率的です。
実際、不動産王と呼ばれる人たちはキャピタルゲインを意識しながら投資を行っている場合がほとんどでしょう。
理由はもう一つあります。
それはインカムゲイン(家賃収入)とキャピタルゲイン(売買益)は密接に関係しているということです。
シンプルに考えましょう。
毎月の家賃が高い物件ならその分売却額も大きくなりますよね?
不動産サイトで実際に見てもらいたいのですが、だいたい毎月の家賃✕20~30年分が売却額になっているはずです。
これは、物件の売却評価額が収益還元法によって計算されているので当たり前といえば当たり前の話です。(これについては後述します)
さてキャピタルゲイン・インカムゲインそれぞれの大きなリスクについて確認しておきましょう。
インカムゲイン:借り手がいなければ0円
不動産投資を始める多くの人が軽視しがちなのが上のリスクです。
不動産は持っているだけで税金が掛かります。また、持っているだけで価値は年々下がっていきます。
借り手がいなければインカムゲインも0円なので単純な表面利回りの計算に意味はありません。
そして多くの場合、買い手がつく物件であるほど借り手もつきやすい傾向にあります。
しかし借り手がいるからといって買い手がつくとは限りません。
買い手が見つからなければ、せっかくインカムゲインで利益が出たとしても持っているだけでジワジワ税金が掛かっていき、やがてマイナスになるでしょう。
そのため、当サイトではキャピタルゲインを狙ったほうがよいと説明しています。
はじめからキャピタルゲインを意識して購入する物件を選択することで、このようなリスクを低減することができます。
それでは、キャピタルゲインとインカムゲインそれぞれに関係する基礎知識を見ていきましょう。
インカムゲインと空室率
どれだけ高い家賃が期待できたとしても入居者がいなければ絵に描いた餅です。
空室率は年々増加しており、今後も人口減少に応じて空室率は高くなっていくでしょう。
空室率を調べる場合は不動産業者のサイトではダメです。
不動産業者が都合の悪い情報を載せる訳ありません。
政府の統計情報を見ましょう。
これらを見ると、今後空室率は否が応でも増加していく可能性が高いことがわかります。
つまり、不動産投資で成功するには以前よりも難しい判断が求められることを意味します。
特に近年人口増減がマイナスに転じたので、空室率の増加は一気に進んでいくでしょう。
インカムゲインと耐用年数
建物には法定耐用年数というものがあります。
この法定耐用年数は税務上(主に減価償却の計算のために)定められた年数であり、実際の建物の寿命とは異なります。
この耐用年数は建物によって異なります。
RC:47年
鉄骨:34年
木造:22年
この法定耐用年数の残存期間によって住宅ローンの融資の判断が変わったり、税金関係が変わったりもします。
法定耐用年数は適当に定められているものではなく、一定の根拠に基いてその耐久性を評価したものです。
実際、築年数が大きくなるほど賃貸収入は落ちていきます。
しかし、RC構造は法定耐用年数47年に対し、100年程持つものもあります。
この法定耐用年数と実際の寿命の差は不動産投資をする上でのポイントになってきます。
耐用年数が過ぎた不動産の行方
実際に耐用年数が過ぎても倒壊しない限り、住むことはできます。
- 耐用年数が過ぎたら?
- 修繕しながら住み続ける
- 建て替える
- 空室になる
住み続ける(貸し続ける)ことができれば、インカムゲインはずっと得られます。
多くの場合、法定耐用年数を迎える頃には投資額の回収は済んでいるため、その後のインカムゲインはそのまま純益になります。
利益で言えば、建て替えると大きなキャピタルゲインも狙えます。
しかし、建て替えには現状では大きなハードルがあります。
キャピタルゲインと建て替え
マンション等の建て替えには大きなハードルがあります。
これはマンションの建替え等の円滑化に関する法律で定められています。
簡潔に言うと、区分所有者(住民)の5分の4以上の賛成が建て替え決議に必要です。
マンションの建て替えには3年程度掛かります。
若い人なら大賛成でしょうが、建て替えが必要になるような古い建物には老人が多くを占めています。
老人からすると数年掛けてわざわざ建て替えをする動機があまりありません。
また1戸当たり700~1500万程度の負担になります。
若い人もそんな金額は用意しづらい場合がほとんどでしょう。
この5分の4のハードルが大きいことは覚えておきましょう。
建て替えのキャピタルゲインを狙う
建て替えは難しいと述べてきましたが、私が実際に行っている不動産投資の一部は「建て替え狙いの不動産投資」です。
建て替えが成功すればこれほど効率の良い投資はないからです。
しかし、これにはいくつかのコツがあります。
簡単に説明します。
建て替えと容積率と建ぺい率
容積率と建ぺい率はよく出てくるので確認しておきましょう。
建ぺい率とは、「建築面積の敷地面積に対する割合のこと」です。
この建ぺい率や容積率は自治体の都市計画によって変更されることもあるため、自治体の動きはチェックしておきましょう。
特に容積率をフルに使っていない物件の場合、建て替えを行った際に、区分所有割合に応じて自分の専有部分が大きくなることがあります。
また、建て替え後の容積率の増分の売却益によって建て替え費用自体を抑えられる可能性もあるため、区分所有者の賛成を得やすいと言えます。
しかしこれらは立地がよくないとあまり現実的ではありません。
今後は高度経済成長期に建設した建物の建て替えラッシュになるでしょうから、建て替えに関する法律は規制緩和されていくでしょう。
例えば東京都千代田区であれば、属性情報一覧から「用途地域」「建ぺい率」「容積率」「地区計画」などを見ることができます。
狙うのであれば東京都心部駅チカ一等地
実際に建て替えやキャピタルゲインを狙うのであれば、選択肢は限られてしまいます。
今後の人口減少や空室率の増加に伴い、地方の不動産にはほとんど価値がなくなってくるでしょう。
最もわかりやすい投資先は都心部の一等地です。
不動産投資は立地が全てと言っても過言ではありません。
実際に私が所有している不動産は、東京都心部の駅徒歩1分以内の物件のみです。
東京の都心部であれば、経済後退の影響を受けるのは他の地域と比べて遅くなるでしょう。
また、こういった物件はキャピタルゲインだけでなく、インカムゲインも長期的に狙えます。
駅チカなら、築年数が古くても入居者はいます。
逆に言うと、東京都心部の駅チカであれば築年数はさほど気にせず購入しています。
日本では新築物件信仰が根強いですが、それは今後変わってくると考えています。
また、中古物件であれば購入価額を抑えることができます。
これらはインカムゲインについても言えることです。
駅チカであれば古い物件でも一定の需要がでます。
建て替えに際しても、立地が良くないとディベロッパーは買い取ってくれません。
「今後50年先を見通しても尚賃貸需要があるか」を基準に立地を考えたほうがよいでしょう。
賃料下落と築年数
以下のグラフを見てください。
このグラフは物件の築年数の経過に伴い、賃料がどれだけ下落していくかを表したグラフです。
このグラフから分かることは
築10年までに価値が一気に下がるということです。
裏を返せば、築10年過ぎた物件を購入するのが投資としては賢いということですね。
特にワンルームの物件に関しては、築20年で底を打ちその後下落することなく推移しています。
また、おおよそ年平均1%の価値の下落が現れています。
利回りを保守的に計算するのであれば家賃収入は80%を掛けて計算した方がよいでしょう。
賃貸物件を探している人は築6年以降の物件を探すとお得ですね。
また、2年ごとの契約更新をしてしまうと、多くの場合、当初の家賃のままの支払になってしまうため、契約更新はせずに新しい賃貸物件を探したほうがお得であることもわかります。
ただし、これらのグラフを見る際には経済背景にも注意が必要です。
新規供給が多い年は買い時だが貸し時ではない
タイトルだけ読んで理解できた人は経済の知識をお持ちの方だと思います。
供給量が増えれば、価格が下落するのは経済の基本です。
不動産においても同じことが言えます。
上のグラフで価格下落が激しい築3~10年はマンションなどの新規供給が多かった2007~2009年です。
逆にいえば、新規供給の少ないエリアであれば上のグラフ程の下落率にはならないでしょう。
しかし、23区内であれば基本的に上のグラフを参考にしておいた方が良いと個人的には考えます。
新規供給が多い時期は、価格が下がるので自分で住むのであれば買い時ではあります。
何が言いたいかと言うと、買い時の判断の1つに新規着工数も見たほうが良いということです。
これも国土交通省がデータを出しています。
世帯数が大きく増加しているのは東京都のみ。
生産年齢人口がギリギリ維持できているのは東京のみで、大阪・愛知などでは既に下落に転じていることもわかります。
着工数についても下落傾向です。
住宅が不足していた戦後と、バブル時代以外は基本的に下落傾向です。
新築ワンルームマンション投資は・・・
少し前にワンルームマンション詐欺が話題になっていましたが、詐欺ではなくてもワンルームマンションへの投資には気をつけなければなりません。
これ、結構小金持ちが引っかかっていたりします。
お金に余裕が出てきて「投資でもするか」ということで「よし、実物資産で堅実に投資しよう」と考えハメ込まれます。
念のため書いておきますが、ワンルームマンションが全てNGという訳ではありません。
しかし、初心者が勧められるまま行っているワンルームマンション投資は大半がマイナスになっているでしょうね。
特に新築ワンルームマンション投資は高確率で失敗しますよ。
ここまで読んで来た方はもうお分かりでしょうが、一応説明していきます。
「投資は余裕資金で」と言いながら住宅ローンで買う人
よく「投資は余裕資金」でと言うと思います。
それなのに住宅ローンを組んでまで不動産投資をしようとする人がいます。
住宅ローンは借金です。
言い方が工夫されているだけであり、借金です。
借金には金利が掛かります。
そしてその金利の表現にも様々な工夫がされています。
初心者はそれを調べもせず、勉強もせず、トントン拍子で購入し、カモになっていきます。
住宅ローンを組んで不動産投資をする場合、金利が重くのしかかり、それによってマイナスになってしまうことがほとんどです。
これはワンルームマンションに限った話ではありません。
そもそも借金してまで利益が出るのであれば誰が売るの?という話です。
そんな収益物件を手放す人はいませんよね。
表面利回りに現れないリスクはたくさんある
不動産業者が説明によく使う「表面利回り」ですが、この通りの利回りになることはありません。
これに対して実質利回りというものもあります。
どちらも空室率を考慮していない時点で論外なのですが、仮に空室が生じなかったとして考えてみましょう。
管理費・修繕積立金月額2万円
物件価格3000万円
購入諸経費100万円
だとすると、
このように、「表面利回り>実質利回り」になります。
さて、ここに空室率を乗じてみましょう。
空室になったとしても管理費や修繕積立金は発生します。
東京都16.5%
神奈川県19.25%
埼玉県22.44%
千葉県25.84%
栃木県32.01%
群馬県32.58%
東京で計算します。
実際の空室率は都内であっても、地域により異なるのでその地域のデータを使ってください。
まだ終わりではありません。
上記の計算では賃料の下落や税金、リフォーム代を考慮していません。
これらを考慮すると、実質利回りは2%以下になります。
さらに、住宅ローンを組んで購入したとするとここに金利分が追加されます。
普通に行えばトータルでマイナスになるでしょう。
ちなみに、管理費や修繕積立金は年々増額していく傾向があります。
経年劣化してきた建物をきちんと修繕するにはそれなりのお金が掛かります。
多くの不動産業者が提示する表面利回りは、貸出家賃が高く、管理費・修繕積立金が安い新築時代の利率であるということを肝に命じてください。
ワンルームマンションに限らず、不動産投資をするのであれば、購入から売却(または建て替え)までの長期間のトータルを考える必要があります。
月額2万円程度の赤字だとしても30年で700万円以上の赤字です。
空室率の救世主?
こんなセールストークもあり得ます。
「今の時代は家賃保証システムがありますから」
「最近話題の民泊としても活用すれば収益率があがりますよ」
どちらも有効ではありません。
家賃保証システムを行っているのは民間企業です。
民間企業は利益が出なければ潰れます。
35年ローン等で購入し、その35年間その会社が生き残っている可能性は著しく低いといってよいでしょう。
なぜなら、「そもそも人口減少で需要がないから」です。
さらに言うと、保証される家賃は相場よりも低い上に築年数に応じて下落していきます。
また、民泊においても自治体の規制が厳しく現状では現実的ではありません。
さらにワンルームでは民泊としての需要も微妙です。
ワンルームマンションで節税?
サラリーマン相手のセールストークでよくあるのが「節税になりますよ」というお話。
やめておきましょう。収益物件でない不良物件を抱えることになるだけです。
個人事業主など、自分で事業を行っているのであれば、節税効果は大きくできます。
よくわからない人は節税を目的に不動産投資を行うのはやめておきましょう。
これを効果的に行うためには会計と税務の基本的な知識があることが前提です。
ワンルームマンション規制でワンルーム需要安泰?
東京23区内など各自治体でワンルームの建築を規制する条例があります。
この条例を口実に「今後ワンルームマンションは供給量が制限されるので投資先にいかがですか?」という不動作業者の口車に乗せられて購入してしまった人も多いでしょう。
ワンルームに住む人が求めているのは家賃の安さなので、まず新築で買う選択肢は候補にすらあがりません。
またワンルームに対する需要自体は変わらないため、ワンルームに入りきらない需要が1Kや1DK、1LDKへ流れていくでしょう。
さらに言うと、これらの規制はワンルームを建築できなくなる訳ではありません。
むしろ今までファミリータイプばかりのマンションを建て替えたとしたらワンルームは増えます。
そもそも条例ですからね。(ちょっと権力者が政治家にゴニョゴニョしたら…)
何が言いたいかというと、ワンルームマンション規制があるからといってワンルームマンションを選ぶ要素にはなり得ないということです。
特に新築で買う意味はありません。
ファミリータイプのマンションは?
上の賃料下落と築年数のグラフを思い出してください。
ファミリータイプはワンルームよりも長期に渡って価格が下落していきます。
投資には向きませんね。
さらに言うと、ファミリータイプはワンルームよりも需要が小さいです。
都内は最近では床面積があってもせいぜい3LDKの物件ばかりです。
少し前までは、4LDKや5LDKという物件もありましたが、最近は新築ではほとんどありません。
シンプルに「単身者」と「家族」どっちが多いか考えればわかると思います。
それだけ需要が少なくなってきていることがわかります。
しかし、上で説明したワンルームマンション規制の影響で、ワンルームへの需要がファミリータイプへ流れ、ワンルームに近い面積のファミリータイプなら需要は高まるかもしれません。
中古物件を狙うのが基本
ここまで新築は投資には向かないことを書いてきました。
では実際に中古物件を選ぶ時はどのように選べばよいでしょうか?
- 築10~20年の物件ならインカムゲインとキャピタルゲイン両方狙う
- 築40年ほどの物件なら建て替えによるキャピタルゲインを狙う
築10~20年の物件
もちろんシングルの物件です。
実際の理論賃料指数を見れば築20年程から横ばいになっています。
築浅の物件は高い賃料で貸し出せる分購入価額も大きくなります。
一方で築年数の経過した物件は賃料も安くなる分購入価額は安く済みます。
ここで勘の良い人は「どっちも利回りは実質変わらないじゃん」と思うかもしれません。
しかし、これらには大きな違いがあります。
まず、築浅物件は購入価額自体が大きくなるため、投資案件として必要になるキャッシュフローも大きくなります。
それだけ資金を用意する必要があるということです。
また、築浅であると「手抜き工事」が見抜けません。
一方で築年数がある程度経過していればどのような修繕が実際に必要になったかが修繕履歴を見ればわかります。
その修繕履歴が他の同様の物件より相対的に多ければ「何かしらの問題のある物件」の可能性が高いため、投資先として避けることができます。
RC構造の建物はおよそ50年は持ちますから、築20年の物件であっても残り30年間賃貸に出すことを前提に計算できます。
築40年程の物件
これは建て替えによるキャピタルゲインを主に狙う物件です。
この場合には容積率をどこまで使っているかをチェックします。
上で説明したように容積率に余裕があれば、建て替えは比較的容易になります。
建て替えまでは貸出してインカムゲインを得ながら建て替えによってキャピタルゲインを狙います。
築年数が深くても家賃相場より安く貸し出せば割と入居者は集まります。
また、「分譲賃貸ばかりのマンション」の方が建て替え決議はスムーズに進む可能性が高いです。
分譲賃貸はオーナーのほとんどが不動産投資家だからです。
表面利回りの目安の計算
実際に不動産投資を行う際にどのくらいの表面利回りがあればよいでしょうか?
保守的に見積もっていきましょう。
まず、家賃収入Sは賃料下落を考慮して80%を乗じます。
また、空室率16.5%(東京都全域)を考慮して(1-16.5%)も乗じます。
すると、家賃収入Sは以下のようになります。
冒頭で投下資本の回収に10年超掛かるのであれば優秀な投資案ではないと述べました。
つまり不動産投資チラシなどに載っている表面利回り10%未満はそもそも論外ですね。
最低ラインの10%を元に賃料下落と空室率を考慮すると
賃料下落と空室率を考慮すると少なくとも15%の表面利回りは欲しいということがわかります。
また、管理費はおおよそ一定ですが、修繕積立金は築年数に応じてだいたい新築時の2~3倍程度まで上がっていきます。
50年間で3倍になるとすると、平均して当初の修繕費の1.5倍を見積ります。
これらの計算は細かくなってしまいますが、その他もろもろのリスクを考慮するのであれば、だいたい数%分は表面利回りに上乗せした方がよいでしょう。
つまり、表面利回りは最低でも15%、できれば20%程度は欲しいということです。
このような物件はほとんどありません。
ちなみに中古物件ではどうでしょうか?
築20年~40年の中古マンションであれば、家賃下落は避けられます。一方で空室率はデータがないので同一のデータで計算します。
10%÷0.835≒12%
3%程さがりました。
中古は修繕費等がかさみます。
それらを含めるとやはり15%くらいは欲しいところですね。
あくまでも目安ですが、最低でもこのくらいの表面利回りがあれば損はしにくいでしょう。
さて、それでは上記のような物件に当てはまるものはどんな物件でしょうか?
それは、築年数が古く、立地がよい物件です。
まぁ売りに出たとしても一般人には回ってこないと思いますけどね。
これらの計算はインカムゲインを狙った場合の計算です。
キャピタルゲインを狙うのであれば全く別のお話です。
また、上記の計算には最も大きなキャッシュインフローである「売却」を含んでいません。
つまり、インカムゲインだけで投下資本を回収しようとしている計算です。築年数にも依りますが売却をうまく行えるのであれば、表面利回りは10%以下であっても十分な場合はあります。
しかし、売却のタイミングさえ間違えなければトータルの利回りで20%以上の利益を出すことができました。
東京の物件なら良いという訳ではない
上で説明した通り、私は東京都心部以外の物件はあまりオススメしていません。
かといって東京都心部なら良いという訳でもありません。
23区内の空室率を見てみましょう
千代田区 :25.8%
中央区:25.4%
港区:9.9%
新宿区:12.6%
文京区:10.2%
台東区:15.1%
墨田区:9.1%
江東区:8.3%
品川区:11.7%
目黒区:16.3%
大田区:12.2%
世田谷区:7.6%
渋谷区:13.7%
中野区:9.1%
杉並区:10.3%
豊島区:12.9%
北区:10.3%
荒川区:12.8%
板橋区:11.6%
練馬区:10.0%
足立区:12.5%
葛飾区:11.8%
江戸川区:9.5%
賃貸用住宅の空室率
千代田区:36.5%
中央区:27.7%
港区:13.9%
新宿区:15.0%
文京区:13.1%
台東区:18.4%
墨田区:9.8%
江東区:7.4%
品川区:12.3%
目黒区:28.2%
大田区:17.4%
渋谷区:14.8%
中野区:9.9%
杉並区:12.9%
豊島区:18.9%
北区:12.1%
荒川区:20.5%
板橋区:14.3%
練馬区:15.5%
足立区:18.2%
葛飾区:16.9%
引用HOME’S
千代田区と中央区の空室率が群を抜いて高いですね。
一方で、江東区、墨田区、中野区は低いです。
インカムゲインを短期的に考えるならば空室率は低ければ低いほど良いでしょう
しかし長期的視点に立つとやや変わってきます。
千代田区と中央区は避けるべきでしょうか?
あまり知られていませんが、千代田区は日本で最も平均年収が高い人達が住んでいる地域です。
金持ち現役世代に人気の地域なんですね。
千代田区と中央区はオフィスが多く、交通の便も非常に良いです。
多くの人のイメージは「勤める所」であり「住む所」ではないのでしょう。
しかし今後その「イメージ」が変わったとしたら?
人口が減ってわざわざ安い郊外に住んで通勤しなくて済むようになったら?
これは個人的な意見です。
現在郊外が居住区になっている(いわゆるドーナツ化現象)のは、当時の現役世代(現在の老年世代)が都心部に住むことができなかったためです。
安い郊外に家を買い、時間を掛けて通勤していました。
その老年世代と子世代がそのまま住んでいるのが現在の郊外です。
ではその老年世代が居なくなる10年後、20年後はどうでしょうか?
郊外は今後空室だらけになり、治安の悪化、外国人の増加等で日本人への需要は減っていくでしょう。
一方で都心部はオフィス需要、居住需要、観光需要などが他の地域に比べて相対的に見込めます。
私は今後、この千代田区と中央区の空室率は大きく改善されると考えています。
実際、これらの地域に生活に必要なお店等も最近増えてきています。
また、千代田区と中央区の「本当の富裕層のいる所」「住む所」のイメージ付けも今後進んでいくと思います。
現在は空室率が高いので売りに出しているオーナーも多いです。
築20年以上経っている物件は多くあります。
短期的に見れば空室率が高い分、余程駅チカでないとインカムゲインは期待できません。
しかし長期的に考えるのであれば一考の価値があるかもしれません。
不動産は5年・10年所有する
キャピタルゲインを狙う際に注意したい点は、不動産の所有期間によって譲渡益に掛かる税率が変わるということです。
バブル期からの教訓として短期売買を抑制する意図により定められています。
居住用の不動産であれば、5年以下39%、10年以下20%、10年超14%です。
最低でも5年は所有しておきましょう。
これについては国税庁のサイトに詳しく載っています。
不動産投資のまとめ
長々と書いてきましたが、簡潔にまとめます。
- 立地が全て
投資先の立地を絞ることに90%の時間を注いでも良いくらいです - 築10年以降の中古物件を狙うのが基本
築20年からシングルの賃貸相場はよこばいで狙い目 - 住宅ローンを組んでまで投資しない
住宅ローンは借金です - ファミリーよりシングル
シングルの方が需要が安定して見込める - 建て替えなら容積率
他にもオーナーが投資家の物件の方がよい
これらは個人的な意見です。
最終的な判断は自己責任のもとご自身の判断で決定してください。
また、最適な投資先と言うのはリアルタイムで変わるものです。状況が変化すれば投資判断も変化します。
そもそも投資先として不動産は適切か
不動産ははっきり言って流動性が低すぎます。
株式などであればワンクリックで売買できる時代ですが、不動産はそうではありません。
単価も高いため、投資先としての相対的リスクは高いです。
さらに、今後は余程のバブルでも起きないかぎり人口減少で旨味が少ない投資先です。
どうしても不動産で資産を運用したいのであれば不動産投資信託の方がよいでしょう。
日本であればJ-REITなどがあります。
投資を考えているなら単価が安く流動性の高い株式等から始めることをオススメします。
初心者は投資でほぼ損を出します。
その損失を最小限に抑えるためには、単価が小さく流動性の高い投資先を選ぶことが重要です。
他の投資においても、重要な考え方は大して変わりません。
具体的な枝葉末節が異なるだけです。
いきなり不動産投資を始めるのではなく、まずは損をする覚悟で少額から投資の体験をすることをオススメします。
実際に運用資金が数億~数十億程度になると、株式だけでの運用は難しくなってくるかもしれません。そうなってから不動産投資に手を出すのでも遅くはありません。
自分が住む家として物件を選ぶなら?
自分が住むことを前提として物件を選ぶのであれば、上記のようなことをあまり気にする必要はありません。
ただし「本当に購入する必要があるのか?」については考えたほうがよいでしょう。
賃貸であれば、家族構成に合わせて引っ越して間取りを変えたり、近隣トラブルや必要な自治体サービスに応じて引っ越すことも可能です。
購入してしまうとこれらは一気にハードルが上がってしまいます。
「夢のマイホーム」は不動産業界が作った標語です。
よくテレビで見ませんか?
「隣がゴミ屋敷で臭いがたまらない」
「隣が孤独死・自殺した」
「近隣トラブルで殺傷事件」
これらは物件購入の大きなリスクです。
実際、不動産投資を行っている人たちも「投資としては不動産を所有しているけど自分が住む家は賃貸」という人は少なくありません。
「子供のために家を残したい」という人もいるかもしれません。
しかし、その物件は東京都心部一等地でもない限り、将来の子供の負担にしかなりません。
賃貸の入居者も現れず、売ろうにも買い手がつかず、ただただ税金だけ取られていくという状況になります。
これらを踏まえても尚、マイホームが欲しいのであればそれはそれで良いと思います。
子供は相続放棄をすれば良いだけです。
「夢の庭付き一戸建て」に価値を感じるのであれば、経済性だけを気にして躊躇するのもおかしな話です。
購入をする場合は以下のサイトも参考にしてみてください。
これらを見ると、超都心部で一箇所だけ何かに守られているかのように安全な区がありますね。
一方でタワマンやおしゃれなイメージで小金持ちに売っている地域は液状化リスクがなかなか悲惨ですね。
埋立地等で未曾有の震災を経験していない日本ですが、実際どうなってしまうのでしょう。
住むために買うなら何も東京でなくても
同じ金額を出したとして、東京都心部ではワンルームですが、地方の田舎なら立派な庭付き戸建てが建ちます。
東京に住まなくてはならない事情がないのであれば、郊外や地方も視野に入れるとよいでしょう。
ただし一度世界トップクラスの経済都市東京の便利さを経験してしまうと、なかなか地方に行く気にはなれないと思います。
マンションの売却のタイミングはいつか?
基本的には投下資本を回収できたらいつ売ってもプラスですが、それでもできるだけ高く売りたいですよね。
最近では2020年の五輪あたり、消費税増税あたりまで上がっていくという見方が強いようです。
「不動産価格 推移」
「マンション 価格 推移」
などでググってみるとよいでしょう。
一点補足するならば、バブル崩壊やリーマン・ショックの時のように偶発的な(詳しい人には必然的な)要因による急激な下落は世界規模の経済崩壊が起きないと起こりづらいでしょう。
今回、2019年の消費税増税前の駆け込み需要による価格上昇や2020年の五輪特需などは、誰でも簡単に予測可能な需要です。
バブル崩壊やリーマン・ショック、サブプライム問題とは性質が異なります。
さて、これを踏まえると・・・?
あまり具体的なことを記載するのは控えます。
こういったことは自分の頭で考えることが重要です。
ネット上に散見される自称専門家の意見を参考にして損をしたとしても、その自称専門家は当然損を被ってはくれませんから。
まとめ
本来、不動産投資は初期投下資本が大きいことから上級者向けの投資です。
建築と同様に、まずはしっかりとした勉強による基礎を築きましょう。
基礎がしっかりしていないとその上の構造物は非常にモロくなってしまいます。
マンションは杭がないと困りますが、投資判断には悔いがないように心掛けてください。