「ピーターの法則」はご存知の方も多いと思います。
カンタンに言えば、ある組織内において
- 有能な人間は出世する
- 無能な人間は出世しない
- ある人がそれ以上出世しないのであれば、そのポジションでは無能ということ
- 組織ってトップ以外無能しかいないんじゃね?!
効率的に稼ぐ方法を探している人にとって、この「ピーターの法則」については詳しく知っておいた方が良いと思うのでちょっと詳しく書こうと思います。
もくじ(見出しのまとめ)
ピーターの法則から会社を考えてみる
Wikipediaの説明はわかりづらいと思う人もいるかもしれないので例を挙げながら説明します。
会社に当てはめながら具体的に考えていきましょう。
まず、
この2点について考えてみます。
ピーターの法則では
「その人物がある一時点でそのポジション(役職・立場)として有能か否か」
を判断している点に注意してください。
たとえば平社員であっても生産性が高く、より多くの利益(付加価値)を産み出す会社員は普通は出世しますよね?
一方で、窓際族と呼ばれるような生産性の低い給料泥棒は出世しませんよね?
杉夫は有能なのであっという間に部長職まで出世しました。
しかし、それ以上は出世できずに生涯を終えました。
このケースでは、杉夫は部長職になる前まではそのポジションで有能だったということです。
平社員としては有能だったけど、部長としては有能ではなかった。
だから部長職より先に出世できませんでした。
このように各会社員を考えていくと、
より多くの付加価値を産み出しているのは、各ポジションで有能である会社員であるということがわかります。
特定の会社員はその組織内で出世できるところまで出世し、最後のポジションでは無能状態ということです。
(会社のトップになる人は別)
これは、各ポジションによって必要になる知識や経験が異なるからです。
いわゆる日本型の「現場叩き上げで管理職や取締役まで出世する人」は特にこのピーターの法則が当てはまります。
一方で欧米などによくある「経営者はMBAを持っている人、現場からの出世はさせない」といったケースでは当てはまりません。
別の視点から考えると、日本企業の場合
「出世の途中の会社員以外は無能」
であるとも言えます。
(トップは除く)
この「出世の途中の会社員」がその会社を支えています。
それ以外の会社員は無能状態である可能性が高いということです。
このピーターの法則で示唆される恐ろしい事は、
組織が全体として無能状態に陥っている
可能性があるということです。
(国家もひとつの組織です)
無能状態への対策
さて、この「ピーターの法則」による組織の無能化を避けるにはどうしたらよいでしょうか?
ピーターは問題提起だけでなく一定の解決策も述べました。
- 出世はさせず、能力に応じた昇給を行う
いわゆる能力給にすれば良いわけです - 出世させる場合は次のポジションで必要になる知識・技術の訓練を予め行う
日本でも一部の企業では管理職になる前にMBAを取らせたりしてますね。
これにより出世させた後に無能な者を特定しやすくもなります
また、ピーターは階級社会の方が無能状態を避けられ効率的な社会だとも指摘しています。
「出世によって無能状態を産んでしまうなら、最初から出世させずに階級を固定化しちまえ!」ということですね。
この「階級の固定化」は上で述べた欧米型企業の「経営者は従業員からの出世でなるものではない」という考え方も似ています。
また、特定の職種において有能な人間だけを雇うという契約社員なども対策になります。
契約社員は出世とは無関係ですからね。
さて、ここまで書いてくると多くの人が気づいたはずです。
「日本の会社って無能状態なんじゃね?」
これらを見ると日本人の生産性の低さの説明もできるような気がします。
組織が無能状態で運営されて行ったら生産性が低いのは当たり前です。
実際に日本でも契約社員を積極的に使っていたり、能力給を取り入れている会社は生産性が高くなり、より多くの付加価値を産み出していると思います。
その理由が「責任を負いたくない」「忙しくなるのが嫌だ」であるとするなら日本の生産性はより落ちていくでしょう。
一方でその理由が「今のポジションで一流になりたい」のであれば日本の生産性は上がっていくと思います。
まぁほとんどの人は前者だと思いますけどね。
それぞれが各ポジションで専門性の高い人間になって役割分担をした方が全体としての生産性は高まります。
こういう言葉があるかどうかはわかりませんが、もし人事部が無能状態の人間で構成されていたとしたら、無能な人間が有能な人間の採用・異動・評定を判断しているという恐ろしい状態になっています。最悪の場合無能状態がどんどん拡散してくだけになりかねません。特に人事部には有能な人間を配置する必要があります。それができないのであれば、無作為に選考した方が組織が効率的になる場合すらあります。
ピーターの法則の前提
ピーターの法則では以下の点が前提となっています。
つまり、「出世はするけど降格はしない」状態ということです。
だから無能状態で居座る人間が発生してしまいます。
無能状態だと思ったらすぐに降格させれば良いのです。
日本は特に降格がないですね。
だから無能状態の組織が多いのでしょう。
いわゆる「適材適所」が実現されていないということです。
これは労働市場全体でも言えることです。
日本の労働市場は超非効率であると思います。
労働市場の効率性を高める1つの方法は、企業の採用コストとリストラコストを小さくすることです。
これらは労働市場の効率性を高めるために必要です。
特に日本では無能な会社員のクビを切るためのコストが大きすぎます。
これでは会社が生活保護を支給しているようなものです。
組織全体としての生産性が低くなってしまい、結果日本の生産性も低い状態になってしまっています。
国際競争でも勝てないでしょう。
また、このリストラコストが大きいがために、
「正社員になれば安心」
などという幻想まで生まれてしまっています。
結果、通常以上に無能な人間が安定を求め会社組織に入り生産性をより低めるという状態を引き起こしています。
また、有能な人間も「正社員は正義」などという共有された価値観によって自身の能力を活かすことのできる行動に制約が出ているのではないでしょうか。
各個人は何をすべきか
マクロ的なお話はどうでもいいという人も多いでしょう。
では実際に各個人、つまりあなたはどういった行動を採るべきなのかを考えていきましょう。
あなたが「有能」である場合
まず、有能である人から。
自身が有能であると思っているなら出世を目指すのはやめましょう。
上で何度も述べている通り、出世をすると異なる能力が求められます。
わざわざ得意でない分野で勝負する必要はありません。
何であっても、勝ち戦以外はしないことが必勝法です。
その有能さが活かせるジャンルで自分でビジネスを始めれば自分の生産性を極限まで高められます。
簡単に言えば現在の給料の何倍も収入を増やすことができます。
この時注意したいのは、自分が何について有能であるのかを正確に把握することです。
自分でビジネスを始める際に、「経営」や「会計」「営業」などがハードルになる(この点において無能状態である)のであれば、そこを自分でやるのではなく、プロに任せてしまい自分は「有能である分野」に集中するのもよいでしょう。
または、自分でビジネスを始める前にこれらのジャンルを勉強しこれらの点においても「有能」になっておくのも一つの手です。
この場合はそれなりの時間(と素養)が必要です。
自分で事業を始めるのはリスクがあって怖いという人も多いと思います。
しかし、「リスクを正確に把握し、勝算がある場合に積極的にリスクテイカーになることができるか」
という点自体が正に資本主義社会における有能性を現していると思います。
また、どうしても出世を目指す場合には、予め次のポジションでも有能であるための下準備をしておくことが必要です。
これを繰り返していければ、最終的にはトップまで上り詰めることができるでしょう。
ただし、現在のポジションの仕事をこなしながら、次のポジションの下準備をすることは容易なことではありません。
出世する先がより上位のポジションになればなるほど、現場仕事とは離れた知識が必要です。
中には理論的なお勉強も必要になる事もあるでしょう。
その会社に人生を捧げるくらいの意気込みが必要になるかもしれません。
あなたが「無能」である場合
一方で現在「無能状態」の人は何をすべきでしょうか。
まず第一に「有能」になるための努力をし、さらなる高みを目指すことが挙げられます。
もうひとつは、「無能状態」を隠し、現在のポジションにしがみつくことです。
できるだけ自分が「有能である」ことを偽装し、アピールしましょう。
無能状態で現在の待遇を維持したい場合には、
労働市場や組織内人事が効率的になること(適材適所が実現されること)に対しては徹底的に反対しましょう。
これは国の政策や会社組織内の方針に依るところが大きいです。
自分が無能状態であり、そのポジションを維持したいのであれば、上で述べた効率化には徹底的に反対すべきです。
具体的には以下の点に反対の姿勢を見せるべきです。
適材適所が実現されると困るので、企業の採用コストやリストラにコストが掛かるような政策を支持しましょう
年功序列以外の出世判断基準を許さず、また降格などがあったら直ぐに不当人事として訴えましょう
能力に応じて給料が支払われては困るので、徹底的に能力給に反対しましょう
これらを企業が利用しだすと、企業が正社員を雇わなくなってきます。徹底的に反対しましょう。
また、これらの待遇改善には大賛成しましょう。契約・派遣社員を使うための企業のコストが増えれば企業が使わなくなるかもしれません
市場が自由化するということはそれだけ競争が激しくなるということです。
競争が激しくなると、無能状態の会社員のクビが切られる事態になりかねません。
このくらいですかね。
もちろんこれらは日本全体としての生産性を低くしてしまいます。
「でもそんなの関係ないし」
「自分さえ給料もらえりゃいいんだよ」
という人は上記の判断をすれば良いのではないでしょうか。
まとめ
「社会全体としてどうすべきか」と「一個人としてどうすべきか」は異なる場合もあります。
日本全体としては、今後人口減少による経済縮小を避けるため、移民促進をせざる得ないと思います。
そうなると日本の労働市場の競争は激しくなるでしょう。
「生産性は低いが給料の高い日本人」と「生産性はよくわからんけど給料の低い外国人」が天秤にかけられた時、企業がどちらを選択するかですね。
また、今まで日本の労働市場は「言語の壁」で守られていた感が強いと思います。
簡単にリアルタイムで翻訳ができるようになってしまったら・・・?
一気に外国人労働者が流れ込むかもしれません。
さらにさらに、人工知能が発達し実用化されれば、そもそも人間の労働力が不必要になる業種もあるかもしれません。
「今までこうだったからこうしてれば安心」
ということはありません。
「10年一昔」とはよく言ったものです。
これを読んでいる若い人は、
「親や祖父母にこう言われたから」
という感じで自分の職業選択をしている人も多いかもしれません。
しかし既に「親世代」「祖父母世代」の労働に対する価値観は通用しません。
「自分のことは自分の頭で考える」
ことが何よりも重要なことだと思います。
誤った選択をして、
後になって「親」や「祖父母」を責めようとしても
その時にはもう取り返しがつかない状況かもしれません。
また、その時にはもう責める相手はいないかもしれません。
全て自己責任な世の中です。
自分の意見、自分の行動、自分の人生は自分で決めましょう。
たとえそれが人(大衆)と違っていたとしてもいいじゃないですか。
他人の目を気にしていてもキリがありません。
「他人に迷惑を掛けない範囲で好きなように生きる」
それはそれで面白い人生になると思います。